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韓国人からみた日本の山 「岳人」08年12月号投稿

インターネットを通じて知り合った韓国人が槍・穂高縦走を終えた後、「日本の山に登ってとても強い印象を受けた」という感想をメールしてきた。
彼は登山歴30年、韓国の山々だけでなく、海外登山も何度か経験しているというウォンさん。彼は日本の山は初めてのこと。ソウルのある山岳会の会長でもある。

いったいどんなことが強く印象に残ったのか、興味がわいたので聞いてみると、いくつかの答えが返ってきた。
1つは、喫煙を規制する標示など特にないのに、吸殻ひとつなくきれいな登山道。
2つめは、向こうから登山者が来たとき、先に行こうとはせず、相手のために待ってくれて、挨拶を交わす日本人の親切さ。
3つめは、大人数の団体でがやがや群がって歩きまわるのではなく、数人で静かに歩く日本人の登山の仕方。
そして、「こんな山が韓国にもひとつくらいあったら」とうらやましく思うことが、登山中何度も何度もあったそうで、メールの最後は「みんなが、大切な自然を永遠に子孫に残すような心になるように祈ります」と締めくくられていた。

1つめと2つめは、日本では今では当然のマナーとして浸透していることなので、改めて言われると、ちょっと違和感を覚えた。3つめは、たまたま彼らが日本の登山ツアーと出会わなかっただけのことかもしれない、とも思う。

そして、これらの裏を返せば、一般的な韓国人の登山スタイルが見えてくる。パーティーでまとまって歩くのではなく、競い合うかのようにそれぞれのペースで歩いたり、山小屋で酒を飲んで賑やかに大声で話していたり。そんな場面に出くわした人も少なくはないだろう。

ウォンさんのような感性の韓国人がいることが、意外だったけれども、とても嬉しく思った。日本の山そのものを楽しむだけでなく、日本人の山の楽しみ方を体感され、共感されたことはとても意味のあることだと思う。ほかにもこのような人が増えればいいなと思ったし、逆に、日本人にも広く知らせたいと思った。

ウォンさんと知り合ったきっかけは、日本の登山情報HP「キルチャビ(みちしるべ)」だ。私はこのHPを、韓国語を勉強している妻と一緒に韓国語で作っている。HPを始めたきっかけは、韓国であまり日本の山の情報を得られないこともあって、日本の山でちょっとした摩擦が起きたりしていると耳にしたからで、山の情報とともに登山マナーや山小屋の利用の仕方などを中心に掲載している。HPを見たウォンさんがメールでの問い合せてきたことが縁で知り合った。
(文 内野慎一 「岳人」2008年12月号 かわら版に掲載「韓国人がみた日本登山の印象」)