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韓国山岳誌に見る日本の登山 「山と溪谷」09年1月号

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韓国での登山

韓国では登山は幅広い年代に人気があり、山は中高年から若者まで多くの人でにぎわっている。山が低く、アプローチもよいので、日帰り登山が中心である。最高峰の済州島の漢拏山(ハルラサン)が標高1950メートル。人気の智異山(チリサン)、雪岳山(ソラクサン)なども2000メートル足らずであり、日本アルプスなど森林限界を超える山とは様相が異なっている。

彼らの山の楽しみ方を、筆者の『山と溪谷』誌への以前の投稿から抜粋してみる。
「初夏の日差しと長い長い登りにほうほうの体でたどり着いた山頂は、沢山の人でにぎわっていた」
「そこかしこで車座になり昼食、いや酒盛りの真っ最中である。焼肉あり、歌あり、踊りあり」
「これを楽しみに1000メートルを越える高度を登ってくるのである。米を背負い、肉を背負い、キムチ、焼酎を担いでくるのだ。私が惹かれるのはこのパワフルで明るい民族性にある」
(2003年8月号クロニクル「智異山縦走記」から)

韓国山岳誌で日本の山の特集

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最近、韓国に3誌ある山岳雑誌のひとつ『MOUNTAIN』誌08年11月号で「日本の山を行く」と題する70ページもの特集が組まれた。北は八甲田山から南は韓国岳まで7つの山行記事と周辺の観光案内をはじめ、日本百名山の紹介、日本登山ツアーを実施している「旅行社のガイドによるアドバイス」があり、また筆者の「島国日本は山国だった」、立山山荘社長・盧雲錫氏の「世界第一の強風と大雪」という概要的な記事などもあった。

ところで、山行記事では今回の特集も含め、いままで日本の登山マナーにあまりふれられていないのが現状である。「みんな携帯灰皿を持っている」「ゴミが落ちていない」「人工物が少なく自然の状態を残している登山道や、木製の看板などに自然保護の意識を感じる」といった感想はあるが、マナーを紹介する書き方ではなかった。

日本の山小屋関係者から「到着が遅くて心配になる」「ほかの登山者が寝ているのに、にぎやかに酒を飲んでいて困った」などの話を耳にするのだが、韓国内での山の楽しみ方を実際に見ている者としては、日本のマナーを知らずいつもどおりの行動をしてしまっているだけであり、決して周りに迷惑をかけることをよしとしているわけではないと思った。
そこで、私たちはなんとかそのギャップを埋めたいと考え、韓国語のHP作りや雑誌への投稿による情報発信を始めたのである。『MOUNTAIN』誌07年7月号には「雲の上『日本の屋根』を歩いてみよう」と題して、おもに槍・穂高岳について寄稿し、一般的な日本の高山の特徴やマナーに重点をおいた記事を書いた。たとえば「夏でも残雪があり、気温も想像より低い」「夕立、雷に遭わぬよう早発ち早着きを」「ゴミは持ち帰り」などである。

韓国人ガイドによるアドバイス

さらに、今回の特集に話をもどすと「旅行社によるアドバイス」では、4社のガイドがそれぞれの観点で述べていたが、どれも的確だった。
「急な気象変化など韓国内とは違う山岳環境」を説明し「午後4時には行動を終えるよう、また悪天候の時は中止を」というアドバイス。
「山小屋の利用文化の違い」をとりあげて一般的な利用方法を紹介し「韓国と違ってお客さんを断らないのをいいことに、夜遅く着く登山者」に対する注意もあった。
「頂上に固執せず、さまざまな楽しみ方を」として「ツアーは人気コースに偏りがちだが、ほかにもよい山はある」という提案。
「登山道をなるべく自然のままに残そうとしていて、韓国人からみれば落石や滑落の危険を感じる人もいる。山が自分の実力に見合っているか見極めよう。日本では年配の人でさえ悪天候に備えた着替えや非常薬品をザックに入れている」というのもあった。

登山マナーは安全のためにも、事前によく理解してもらいたいと思う。お互いの登山スタイルを知るのも面白いことで、実際に北アルプスを歩いて、日本人の静かに自然に浸るような楽しみ方に強く共感した人もいる。

『MOUNTAIN』誌では著名な日本人登山家の記事もあるし、書評欄で小説『氷壁』や『青春を山にかけて』の翻訳版、人気漫画の『岳』(韓国語版のタイトルは『山』(サン))も紹介されるなどさまざまな情報もある。登山の情報とともに文化や習慣の違いなどをお互いに知ることで、もっと山で交流しやすくなればいいなと思う。山好き同士なのだから。
(文  内野かおり 内野慎一 「山と溪谷」2009年1月号の掲載記事を一部修正)