日本の山で
北アルプス上高地で韓国人向け登山相談員 2015年
昨年(2014年)に引き続いて、韓国人登山者の多い日に「キルチャビ(みちしるべ)」の内野かおりが遭対協(北ア南部地区山岳遭難防止対策協会)の登山相談員をつとめました。
韓国では8月初めに夏休みの会社が多く、登山者が集中することが分かってきましたので、日にちと時間を絞って遭対協事務局に申し出たものです。(7月31日(金)夕方から8月3日(月)早朝にかけて)
今年は上高地バスターミナルの登山相談所で、夏期常駐の相談員とともに入山者に登山計画書の提出を呼びかけながら、韓国人に対応しました。(昨年は横尾)
韓国人の入山は大きく2パターンあって、前夜平湯などに泊まった人が早朝入山するものと、夕方に到着して小梨平などで1泊してから山に向かうパターンとがありますので、朝は登山相談所に立ち、夜は夕食が終わる頃を見計らって小梨平に出向きました。
経験のあるガイド、危険性を熟知
予想した通り、8月第1週末に合計200名近くの韓国人登山者が入山しました。
大半は旅行会社が関与する10数名~20名のグループで(大きいところでは45名のグループ)定番のコースに向かいました。(槍沢→槍ヶ岳山荘・泊→大キレット→穂高岳山荘・泊→奥穂→前穂→岳沢)
ツアーリーダー(ガイド)はたいていの方が同コースの経験があり、危険性も熟知しているようでした。
後日、韓国のガイドからも、受入れ側からも聞いたのですが、悪天候の際には柔軟にルートを変更しているとのこと。例えば、大キレットへ向かわず南岳から天狗原→槍沢へ下るなど。遠路はるばるの山行ですので計画を変更しづらいでしょうけれども、よい傾向ですね。
ヘルメット着用の意識も高まっていて、JTツアーという韓国の旅行会社は、小梨平(日本アルプス観光)にヘルメットを預けてツアーで使用しています。
携帯電話の利用、個人へ情報を、山岳保険の浸透
なかには携帯電話の電波が届かないことに不安や不便を感じるという声がありました。
北アではむしろ携帯の通じるエリアが拡大しているわけですが、山が深くない韓国で携帯やスマホに慣れているためでしょうか。
実際に昨年ある韓国の方に、スマホの画面に登山用アプリで韓国での山行記録(位置と時間を自動的に記録)が表示されたものを見せられました。
旅行会社が関与しない5~10名程度の個人的なパーティーも数組ありましたが、たいていツアーと同じ定番コースでした。(槍沢→槍ヶ岳山荘・泊→大キレット→穂高岳山荘・泊→奥穂→前穂→岳沢)
1日の行程が長いように感じますが、もしコースのくわしい情報や、コース中の他の山小屋の情報が入手できれば、個人の場合、独自に余裕のあるコースを設定しやすくなるかもしれません。
それから、びっくりしたのですが、勤務時に接した韓国人はみんな(ツアー、個人とも)アルピコの「上高地の自然を守る会」に入会して山岳保険に加入していました。
日本では遭難救助に費用がかかること、そのため保険で備える意識がかなり浸透してきたように感じました。
したがって、上高地以外の登山口から入山する外国人が加入できる山岳保険が、今後ますます求められてくると思われます。
(内野慎一 内野かおり 2015年8月31日投稿 2017年8月25日加筆)