日本の山で
今こそ山岳情報の交流が必要です 韓国山岳誌「MOUNTAIN」07年1月号
2006年12月、旅行滞在中にソウル・ナミョン洞の韓国山岳雑誌「MOUNTAIN」編集部を訪ねて、日本で見聞きした韓国人登山者のこと、そして登山情報の交流とお互いの理解の必要性をお話ししました。これは国内外で活躍される登山家の大西保さんに岳友のナム・ソヌ社長を紹介していただいて実現したものです。
日本への登山人気が盛り上がる一方で、山でのちょっとした摩擦などを、山岳関係者や、日韓双方の登山者から聞きますが、その背景には登山スタイルの違いとともに文化、習慣の違いがあることや、山岳情報が乏しいことなどが分かってきました。
一人の日本人からの意見として活かしてもらえればとお話をしたわけですが、早速インタビュー記事として掲載されました。なかには韓国人に耳の痛いことも申しましたが、とても真摯に聞いていただきました。
今こそ山岳情報の交流が必要です
(韓国山岳誌「MOUNTAIN」 2007年1月号 インタビュー記事の要約)
●「私(内野)は(日本登山の)韓国人をとても好ましく思っています。しかし、留学や旅行などで韓国の文化や習慣の理解があるからこそそう思えるとも言えます。」
相互理解が不足している両国の登山文化について、もどかしい思いをしている。
●「日本人は午後3時頃までに行動終了するのを当然と考えます。しかし、韓国人は遅い時間に出発したり遅くまで行動するため、山小屋の従業員もとても心配になります。日本人の目には常識外れに映ります。」
●「韓国人は登頂の喜びをみんなで分かち合いたがりますが、日本人は静かに各々で山を眺めることを楽しむ人も多いです。お酒を呑みながら賑やかに楽しむのもいいのですが、山小屋ではエチケットを守り日本の習慣を理解し、配慮してくださることを願います。」
●内野さんは、最近北アルプスツアーが人気だが、登山客の大部分が山の名前や地名さえも知らないまま、旅行社に依存している点を残念がる。
●「団体で来ているため、山で日本人と交流しにくいという面もあると思います。」
●「日本の山の情報が少ないうえに、一部の旅行社のツアーに限定されているため、韓国人登山客が北アルプスに押し寄せています。情報が増えれば、特定のコースに集中することなく登山の幅も広がることと思います。」
●旅行社の韓国人ガイドについて
「日本語はもちろん、突然の状況に対応できる能力が必要ではないでしょうか。」と役割を強調した。
●一方、「山小屋に韓国語を話せる人や、ハングルでの案内文はほとんどない。」という日本側の現状も伝えた。
●このような点をあげながら、お互いの文化の違いについての理解と、持続的な情報交流の必要性を強調した。彼女は3泊4日の韓国智異山(チリサン)縦走を行い、日本の山岳雑誌に掲載されたこともあるという。
●最後に内野さんは万が一の事故についても言及した。「遭難救助及び費用負担が韓日で大きく違う。例えば、韓国では山が低く比較的容易に救助隊が入れるので、夜を徹して行動することも多いが、日本では二次遭難の可能性があれば日没以降は基本的に動かない。」登山者が入山申告書(注:入山届のこと)を提出しても、どのような状況でも救助されるということではないと忠告した。
● 「韓国と日本がお互い情報を提供し合っていけば、幅広い登山を通じて韓日登山者の交流が深まる」し、「私ができることはお手伝いするつもり」。日本が「近くて遠い国」という認識の壁がなくなることを願ってのことだ。なぜなら、彼女の言葉のように「山の中でくらいは、国と国の壁は必要ないから」だ。
(2007年1月)