日韓の交流
県知事訪韓 信州の山PRをサポート 韓国側の受け止めは
2015年8月、長野県の阿部守一知事は韓国訪問のなかで、旅行会社を訪ねて誘客のため県内の山岳高原をPRされました。
キルチャビは、県担当者からの依頼で、プレゼン用のパワーポイントの翻訳などを手伝いました。
日頃、私たちは現場の最前線、いわば末端で活動していますので、トップセールスの効果がどれほどのものか見当もつかない、というのが正直なところですが、知事が動けば組織や多くの人が同じ方向へ動くわけですから、今後の展開に大いに期待しています。
知事の韓国訪問は8月9日から12日の日程でした。2018年冬季オリンピックの舞台平昌(ピョンチャン)のある江原道(カンウォンド)知事との会談、ソウル市長との会談、そしてアシアナ航空社長に松本空港への就航の要請、旅行会社に山岳高原のPR、などが行われました。
訪問団には県庁関係者のほか、在日本大韓民国民団中央本部の呉公太(オ・コンテ)団長ら6人や、長野県議会の日韓親善促進議員連盟の議員11人も加わりました。
キルチャビのメンバーは県から一歩も出ていませんが、気持ちは海を渡ってきました。
旅行会社に山岳高原をPR
さて、山岳高原のPRについてですが、プレゼンで使われた写真はどれも美しく、特に大きな写真の上高地、乗鞍岳、中央アルプス千畳敷、志賀高原、八ヶ岳が画面いっぱいに映されたらさぞかし迫力があったことでしょう。
信濃毎日新聞の記事によると、旅行会社は「県内の3000メートル級の山岳の登山や、上高地、中央アルプス千畳敷などを訪れる商品を扱っており、モデルコースの提案などを求めた」とのこと。
槍ヶ岳、穂高岳に集中している登山ツアーが各地の山に目を向けるきっかけになるかもしれません。
訪問したのは大手旅行会社のハナツアーと登山専門のヘッチョ旅行社。
県担当者によると、ハナツアーからは「地方の中では長野県に最もポテンシャルを感じている」「山岳高原を活かしたツアーを組んでいきたい」、ヘッチョ旅行社からは「韓国は2000メートル以下の山しかないので、長野県の3000メートル級の山にあこがれがある」という声が返ってきたそうです。
大手ツアーと登山専門の旅行会社
旅行会社の事情を少し説明します。日本で登山を取り扱うのはJTBのような大手旅行会社よりも、登山専門の会社が主流です。アルパインツアーサービスやアトラストレックなど、登山をやる人ならご存知でしょう。
韓国でも同様で、北アルプスなどに来ているのはほとんどが登山専門の中小の旅行会社です。ヘッチョ旅行社はそのなかで主要な1社です。すでに10数年前から登山者が増えてきていて、槍ヶ岳、穂高岳周辺の様子を見ていると会社も淘汰され、人数も落ち着いてきています。
ですので今回の訪問による効果は、量的、人数的には限定的かもしれませんが、目的地の山域の広がりなど質的なところで表れてくるかもしれません。
一方で、インバウンドの観点からは、大手のハナツアーなど登山ではなく山岳高原の観光地を回るツアー、例えば善光寺や松本城とあわせて上高地や、乗鞍高原、志賀高原、中ア千畳敷、八ヶ岳山麓、霧ケ峰などの高原を回るツアーに力を入れていくかどうかが、誘客のカギを握るのではないでしょうか。
松本空港に飛んでくるか
もう一つの注目は松本空港へのチャーター便の就航です。
アシアナ航空社長は「長野の優れた自然環境などから韓国人のチャーター便利用は見込める」としていますが、国内で標高が最も高く空気密度が薄いため平地の空港より長い滑走路が必要とされるなどの課題があります。
北アルプスへの登山者は、今は中部国際空港や地方空港の富山空港や石川の小松空港から長野県に回ってきています。
松本空港は登山口に近いという大きなアドバンテージがあります。韓国人登山者は度々ハードスケジュールが指摘されていますが(レポート 韓国人による韓国人のための日本登山アドバイス PDF)、もし就航が実現すれば、日程に余裕ができますので、登山の安全面にも寄与するでしょうし、韓国人も大好きな温泉や、松本城など街の観光、登山用品などの買い物に展開していくかもしれません。
(内野慎一 2015年10月21日 参考 信濃毎日新聞)