日本の山で
レポート 韓国人による日本登山アドバイス
「MOUNTAIN」誌で登山ツアーガイドが語った内容
韓国の山岳誌「MOUNTAIN」2008年11月号の日本の山の特集のなかで、日本登山ツアーを実施している旅行会社のガイドによる、マナーなどについての記事がありました。われわれ受入れる立場からも興味深い内容でしたのでご紹介します。
レポート 韓国人による韓国人のための日本登山アドバイスとは PDF
これまでの雑誌記事
まず、以前の雑誌記事をみると、日本への山行記はたびたび掲載されていたが、登山マナーにはあまりふれられていなかった。「みんな携帯灰皿を持っていてびっくりした」「ごみが落ちていない」「鉄のはしごや階段などが少なく自然の状態を残している登山道や、木製の看板などに自然保護の意識を感じる」といった感想はあったが、マナーを教える書き方ではなかった。受入れ側として伝えたい内容にはなっていなかった。
もちろん、登山マナーを教える記事はあった。飲酒の注意、雨具などの装備、コンパスや地図をしっかり使って、などが書かれているが、韓国内の低山を対象にしたものであって、日本でのマナー、特に高山には対応できていなかった。
同誌08年11月号の日本登山特集のなかの「専門家からの助言『悪天候に備えて登山マナーを守れ』」では4ページにわたって4社のガイドが、それぞれ違う観点で述べていたが、とても的確で良かった。
♦ヘッチョ旅行社 キム・ジンソク氏
「韓国内の登山に慣れた人は、日本の山での急な気象変化と、国内とは違う山岳環境に起因する事故に注意をするよう」と言い、「午後4時には行動を終えるよう。また悪天候の時は中止を」とアドバイス。
「ツアー参加者はガイド(添乗員)を見きわめなければならない。なかには客より体力のない人もいる。日本の山の経験と、完璧でなくても日本語能力が必要」
♦カンガディンツアー カン・チョルウォン氏
「山小屋の利用文化の違い」をとりあげて一般的な日本の山小屋の利用方法を紹介。「韓国ではほとんどを国立公園が運営し、インターネット予約による定員制。一方、日本では民間が経営しており、5~6人以下のパーティーは先着順、団体は電話予約するが、全ての客を受け入れる」
♦プルン旅行社 シン・ジェチョル氏
「頂上に固執しなければ、さまざまな楽しみ方が得られるかもしれませんよ」という提案。「ツアーは人気コースに偏りがちだが、ほかにも良い山はある」
「誘われてツアーに参加したが、険しすぎて後悔し再訪しない人もいる」という問題の指摘。
「登山ルールを守ろう」と呼びかけて、「日本では入山料、管理人、取り締まりがないが、山ではごみひとつ落ちていないし、タバコを吸う人もいない。むやみに植物など採らないように」
♦韓国旅行社 ホン・オクソン氏
「日本の山は比較的短時間で3000mに立てるが、韓国の山とは違うことを忘れてはならない」
「日本では登山道はなるべく自然のままに残そうとしていて、落石や滑落の危険ととなりあわせだと感じる人もいる。急峻な岩稜を通ることもあるし、強風にさらされることもある。そんなとき、登山者本人の経験や装備、引率ガイドの資質が問われる。山が自分の実力に見合っているか見きわめよう」
「日本人は年配の人でも悪天に備えた着替えや非常薬品を持ち歩いている」
日本の山で問題があった時には、「韓国人は」とひとくくりにされがちですが、十分な認識をもっている人もいることが再確認できます。山小屋関係者はじめ受入れ側と韓国人ガイドの双方の今までの努力の賜物でしょう。
ただし、今回の記事のなかにも「7、8月は雨期だから避けるのがよい。台風も多い」という首を傾げたくなるような記述もありましたので、ねばり強くうったえ続ける必要があると思います。
実績のあるツアー会社はビデオなどを使って、ツアー客に事前にレクチャーしているそうです。
一方で、新規参入の旅行社は、ガイドや添乗員を含めて認識が薄いです。
さらに、個人的に来る登山者も含めると、日本の山のことはまだまだ周知されているわけではないといえます。
(文・写真 内野慎一 内野かおり 2009年4月作成 2013年9月改訂)
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